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ソルティビッチ
第1章 ソルティビッチ…
 1

「え、誰でしたっけ?」
 と、わたしは呟く。

「あ、俺だよ、この前、ヤッたじゃん」

「あら、そうだったかしら?
 酔っ払ってたから覚えてないわ…」

 本当は覚えている…

「くっ、じゃぁ、思い出させてやるからさぁ、また今夜も行こうぜ」
 男はそう言って近づいてくる。

「あ、思い出したわぁ…
 あの腐れチンポのキミかぁ…」

「え、あ、な、なんだよ」

「あのさぁ…
 たった一晩寝たくらいでさぁ…
 わたしの男のフリ、彼氏ヅラしないでくれるかなぁ…」

「あ、うっ…」
 男は少し怯んだ。

「それにさぁ…
 アンタのあんな腐れチンポじゃさぁ、またヤリたいって想わないしさぁ」
 
「ふふ…」
 すると、カウンターのわたしの反対側に座っている、やはり常連客の女性が笑った。

「っく、くそっ…
 この、クソ女のヤリマンがぁっ…」
 すると男は、そう捨て台詞を吐き捨てて、バーを出て行った。

「うふ、腐れチンポだったの?…」
 そしてすかさず常連客の女性がわたしに問いかけてくる。

「あ、うん、そうヘボ…
 下手くそな男だったわ…」

 わたしはそう言い捨て…

「ふうぅ…」
 と、タバコの煙を吐き…
 そう言った。

「でも、クソ女のヤリマンはないわよねぇ」
 そして…
 カウンターの女性客はそう呟いてくる。

「あら、わたしには…
 クソ女やヤリマンって言葉は、最高の…」

 褒め言葉よ…

「あららぁ、やっぱり悠里さんは面白い人ねぇ…」
 
「だってぇ、このバーの名前は
『Bitch(ビッチ)』クソ女じゃん…
 そこで飲んでんだもん、その通りよねぇ…」

「いや、それはアナタだけ…
 悠里さんだけよ…ねぇ、彩さん…」
 その女性客はカウンター内にいるこのバーの店長であり、女性バーテンダーの彩ちゃんに問いかけた。

「ま、ウチみたいなこんな店に来る女は、大概は、クソ女、ビッチだけど…

 悠里さんはもっと特別の、スペシャルビッチよねぇ…」

 彩ちゃんはグラスを拭きながら、微笑みを浮かべてそう応えてくる…

「あらぁ、彩ちゃん、それも、褒め言葉として聞いておくわぁ…」


 そうわたし悠里は…

 クソ女のビッチ…

 塩漬けのメス犬…

 つまり『ソルティビッチ』なのだ…





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