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ソルティビッチ
第1章 ソルティビッチ…
 44

 え…

 すると、カウンターの反対側に座った、さっき来店してきたカップルの視線に気付いた、いや、感じたのだ。

 それも…

 女性の方からの視線に…


 え、なんだ?

 わたしを見ているよ…ね?

 わたしの後ろはトイレに通ずる壁であるから…
 やはり、その視線はわたしに向いているのか?

 しかも、ガン見ではなく、チラ見なのだ。


 この店は、バイセクシャルで、どちらかというとビアン色の妖しい魅力の彩ちゃんのバーであるから…
 そっち寄り系統の女性客は少なくはない。

 だが、今、わたしを見てきている女性客はカップルなのだ…
 男と、彼氏と来店してきているのだ。

 まぁカップルでも、そっち系の強い彼女なのかなぁ?…
 と、わたしはその程度に想う事にして、気にしないように意識をする。

 わたし自身もバイセクシャルであり、彩ちゃんとはいい関係であるから自ずとそんな香りを発しているらしく、よく、こんな感じでのビアン系の女性の目には留まるらしいのである…

 だから、こうした視線は多からずではあった。

 しかし、あくまでもチラ見なのだ…

 決してガン見的な感じ、いや、誘い等の視線では無い…

 逆に、わたしが自意識過剰なのか?…
 そんな感じでもあった。

 だから、敢えて気にしないようにする。

 そして、そんなチラ見にも慣れて、あと一口飲んで退散しようと思った時であった…


 えっ…

 あっ…

 わたしは思わず彩ちゃんに視線を移す…

 だが彩ちゃんは忙しくカクテルを作っており、わたし視線の合図には気付かない。


 だが…

 なんと、その彼女は…

 今度ははっきりとわたしを直視し…

 腸詰めウィンナーをフォークに刺して食べてきたのである。


 そして…

 それは…

 その食べ方が…

 あの駿くんと会った夜の…

 彩ちゃんに指摘され…

 無意識に彼の目を魅きつけた食べ方に近い、いや、同じように…

 大きく唇を開き…

 まるで…

 アレを唇に含むかのような…

 あの夜のわたしそのものであったのだ。


 えっ?…

 なに、なんなの?…


 そして彼女は…

 今度は、その腸詰めウィンナーをいやらしく食べながら、いや、咥えながら…

 わたしを直視してきた…

 しかも獲物を狙うかの様な目で…





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