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ソルティビッチ
第1章 ソルティビッチ…
 45

 その彼女は…

 その腸詰めウィンナーをいやらしく食べながら、いや、咥えながら…
 わたしを直視してきたのだ。

 しかも獲物を狙うかの様な目で…

 そして、しかも、隣の彼氏の肩に首を寄りかからせながら…


 え…

 どういうこと?…

 どういう意味の直視なの?…

 わたしは久しぶりにドキドキとしてしまう。

 だってその彼女は隣の彼氏と一緒に来店してきた…
 つまりカップルなのだ。

 今夜のハロウィンで二人でデートでも楽しんできての、このバーの来店な筈であろう?…

 その証拠に隣の彼氏に寄りかかり、肩に首をもたれかけて…

 だが、あの、まるで、男達からのナンパのような獲物の女を見る様な目でわたしを見つめてきている…

 え?…

 なんなのその目は?…

 わたしを誘っているの?…

 じゃあ隣の彼氏は?…

 その肩にもたれているのは?…

 意味がわからない…

 理解不能であった。


 だが、わたしはこれまで散々ナンパされてきている百戦錬磨といえる女なのだ…

 だから、その目がわたしを誘っている目であるという事は…
 間違いようがないのだ。

 
 だからこそ、意味がわからない…

 そして頼みの彩ちゃんはカウンター内で忙しそうにお客の注文のカクテルを作っている…
 さすがに邪魔はできない。

 ドキドキドキドキ…

 その彼女のウィンナーの食べ方は…

 まるでこの前、わたしが駿くんを誘うために仕掛けたいやらしい食べ方だし…

 間違いはない…

 彼女はわたしを誘っている…

 もしも隣に彼氏がいなければ、100%の確信があるのだが…

 しかし、わたしも…

 まるで捕らわれてしまったかの様に、彼女の視線から外せなくなってしまっていた。

 いや、心が昂ぶり、捕らわれていた…

 だが、彼女はわたしを見つめながらもウィンナーを食べ、咥えながらも彼氏の話し掛けにも…
 わたしを見つめながら応えている。

 ドキドキドキドキ…
 心が高鳴る。

 ウズウズウズウズ… 
 そして昂ぶりが疼いてきた。

 わたしはその彼女の獲物を見つめる不思議な目に…

 捕らわれてしまっていた…
 
 すると彼氏がトイレに立ち、彼女一人になった時、その彼女は変わらずわたしを見つめながら、ドライマティーニを一口含み…

「あっ…」





 
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