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第43章 傷痕

　そのため、大昔には怒れる龍神への供物として〝花嫁〟が捧げられたそうな。むろん、花嫁というのは生け贄、平たく言えば人柱である。ただ、あまりに昔のことゆえ、人柱が立ったのが真実かどうかを知る者はいない。隣町の書庫に保管されている村史にも、




ー当時、大蛇が暴れて難儀したため、大蛇鎮めの儀式を行った。




　と公式記録が残っているだけだ。が、その儀式というのがどうやら〝生け贄を捧げた〟儀式らしいと、村では今も真しやかに囁かれている。




　ハクビ村の住民は半農半漁だ。ボクスの父祖は代々、漁をして身のたつきとしてきた。ボクスも当たり前のように父と共に船を操り漁をすることを憶えた。