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第43章 傷痕

　ひと月前に父が亡くなった。原因はやはり心臓発作だった。倒れた夜のようにボクスが隣町まで医者を呼びに走るも、間に合わないほど呆気ない死だった。医者の言葉では、さほど苦しまずに一瞬で亡くなったというのがせめてもの救いだ。





　ミスとはまだ何の約束も交わしていなかったけれど、ボクスは彼女が父の弔いに来てくれるのを期待した。だが、彼女は弔いには来なかった。ボクスはそのことに落胆したが、ミスは恋人というだけで、妻になると決まった立場ではない。彼女に未来の嫁として弔いに出るのを求めることはできないと判っていた。