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後宮に蝶は舞いて~Everlasting love~第二部
第43章 傷痕
母に怒鳴るのは筋違いだと思えども、ボクスの中であらゆる感情が凶暴にせめぎ合っている。これ以上、母を傷つけるわけにはゆかない。
ボクスは一人、家を出た。どこをどう歩いていたのか判らない。気がついたときは、村の中央を縫うように流れる龍江のほとりにいた。今、季節は梅雨時を迎え、河の水量はかなり高い。今年はお陰で雨がよく降り、龍神さまはお怒りではないらしい。
河面は夜目にも黒々と濃い墨を溶き流したような不気味な色に染まり、底は知れなかった。龍江は村に豊かな実りと恵みをもたらす反面、時に荒ぶる大蛇となり、生け贄という怖ろしい供物を要求する。
ボクスは一人、家を出た。どこをどう歩いていたのか判らない。気がついたときは、村の中央を縫うように流れる龍江のほとりにいた。今、季節は梅雨時を迎え、河の水量はかなり高い。今年はお陰で雨がよく降り、龍神さまはお怒りではないらしい。
河面は夜目にも黒々と濃い墨を溶き流したような不気味な色に染まり、底は知れなかった。龍江は村に豊かな実りと恵みをもたらす反面、時に荒ぶる大蛇となり、生け贄という怖ろしい供物を要求する。