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後宮に蝶は舞いて~Everlasting love~第二部
第43章 傷痕
 ボクスの思考はまた過去へと遡る。




 ボクスが第二の住処としたのは、ハクビ村から徒歩(かち)でゆうに二日は要する町だった。



 その日、ボクスは町の目抜き通りを歩いていた。ボクス当人としては、まったくいつもと変わりないつもりなのだが、身体が不自然に左右に揺れているのに本人はまったく気付いていない。どう見ても尋常ではないその様子に、彼とすれ違う通行人はある者は不審げに、ある者は気遣わしげに振り返っている。



 ボクスは緩慢な動作で空を仰ぐ。今日もまた空は憎らしいほど綺麗だ。ただし、冬の空は寒走った薄青い空で、見るからに寒々しい。村を着の身着のままで出てきた彼が周辺の町村をさまようこと二ヶ月、村を出たときにはまだ村の入り口の土地神さまの前で秋の野花が可憐な花を咲かせていた季節であった。
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