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いい男…
第1章 いい男…

 あら、いい男だわ…

 映画のレイトショーの帰りに行き着けのバーで飲んでいると、反対側に座っている二人連れの男達が目に入った。 

 一人はワイルド系で短髪の色黒でガッチリタイプ…
 
 もう一人は眼鏡を掛け、理知的な顔をしている…

 そして二人共スーツ姿であるから仕事帰りのサラリーマン系のようである。

 その二人の内の、片方のワイルド系の男のことが…
 気になった。

 タイプだわ…

 見るからに精力絶倫な感じだし、なんとなくだが…
 上手そう。

 なんとかならないものか?…

 だが相手は二人組だし、さすがに二人を相手にするなんてことは小説じゃないからとても無理。

 あ、そうだ、あの作戦を…

 そして私は飲んでいるマティーニに添えられているオリーブの実を唇に含み、舌先で転がし、アピールをする。

 だが、それは徒労で終わってしまう…

 なぜならば、狙った男が全く私を見ようともしないのだ…
 いや、目さえも合わないのだ。

 仕方が無い、こんな夜もあるさ…

 今夜は大人しく帰ろう…

 その前に私はトイレに向かう。

 トイレに行くにはその男達の脇を通らなくてはならない。

 そしてトイレに入り、私は手洗いの鏡を見て思わず苦笑いを浮かべ…
 その鏡に映る自分の笑みを見つめ、思わずため息をつく。

「ふうぅ…うふっ」
 そして、また、笑いも漏れてしまう。

 あれじゃあ、ダメに決まってるわ…

 初めから無理だったのよ…

 だから、目さえも合わせてもらえなかったんだわ…

「ぷ、うふふ…」

 こんないい女の私を見ないなんて…

 そう、一瞬、プライドも揺らいだのだが、あれならば仕方がない。

 しょうがないか…

 なぜならば…


 二人はカウンターの下で…


 手を握り合って指先を絡めていたのだから…

 あれならば無理もない…

 そして諦めもつく…


 しょうがない…

 今夜も一人で慰めるしかないか…






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