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背徳のキス
第3章 2話目


「.....あのさ、早く見せてくれる?」


両目がこぼれ落ちるのではないかと思う程、限界まで見開かれたイエローアンバーの瞳と視線が絡む。その鬼気迫る表情に威圧されたシェリーは、慌てて巾着袋から指輪を取り出した。


「この指輪で合って」


「る?」とシェリーが言い終わるよりも前に、レヴァイアタンは彼女の手から乱暴に指輪をひったくった。その光景にシェリーは唖然とする。先にお礼を言うべきでは?と彼女は口を開きかけた。



「エレナ、おかえり。」


レヴァイアタンは甘く蕩けるような声で指輪にそう語りかけると、頬擦りする。そのまま己の薬指に指輪を嵌めると、チュッと可愛らしいリップ音を立てて口付け、柔和に微笑んだのだった。


シェリーは彼を直視出来ず、思わず目を逸らした。


昨日のような邪悪の化身みたいな笑い方をされるよりは百倍マシとはいえ、見ているコッチが気恥ずかしくなるような、観察性羞恥心を覚えた為である。



「.......あ、ありがとう。指輪拾ってくれて。」


頭上から声がして顔を上げれば、恍惚感に満ちた笑みが消え、顔を紅潮させた彼と視線がパチリと合う。


「どういたしまして...。あの....指輪見つかって良かったですね。」



彼の羞恥が伝染して、再び自分の頬が熱を帯びる。この何とも気まずい雰囲気を打破したかったが、彼は無言になってしまった。


”何でも良いから喋ってよ。
 恥ずかしいでしょうが“



「じゃ、じゃあ帰るから。」


「え、ちょ」


妙な沈黙が落ちるこの空気に耐えきれなくなったのか、彼はシェリーの返答を待たずにバショウカジキ並みのスピード(時速100km超え)で瞬く間に姿を消した。逃げ足の早い奴である。


”泳ぐの、早....。
彼、人魚の中でも最速なんじゃ...。
................。
なんか、もっと傲慢で、底意地の悪いマーマンだと思ってたんだけどなぁ...違うのかな?
まあ、変な人だったけど。“


もしまた何処かで会う機会があれば、自己紹介ぐらいしてもいいかな。


今後一切関わりたくないと思っていたシェリーだったが、今回の件で彼へのイメージが大分変わってしまったのであった。




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