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背徳のキス
第4章 3話目
“情緒不安定だったとはいえ、あんな姿を晒すとかマジで有り得ないんだが。”
不覚にもシェリーの目の前で醜態を晒してしまったレヴァイアタンの心境は、一言で言えば、”穴があったら入りたい“だった。
その為逃げるようにして魔海へ戻ってきたレヴァイアタンは、塒に引きこもって愧死したいと渇望した。だが膨大な仕事を前にその衝動的かつ馬鹿げた感情も溜息と共に霧散していったのだった。
ザバザバサバサバサバッ!!!!
被食・捕食関係が成立しないように結界を張って区切った数多の食事スペースに、給餌係に任命された魔海生物達が各々、養殖魚達を海に放っていく。そしてその養殖魚を魔海生物が食らう。端的に言えば、魔海式のダイナミックな食事タイムだ。
熟練の給餌係がいるとはいえ、何千万と居る魔海生物達一匹一匹に平等に餌を配るのは不可能だ。おまけに彼らは共通して生存本能が強く食い意地も張っている。優雅にお喋りする余裕も無く食事は完全に早い者勝ちだが、それでも至る所に養殖場が存在し、餌が豊富な魔海で餓死者は出ていない。食物連鎖が意図的に発生しない平和的な状況等、自然界では有り得なかった筈だ。だから彼らはこの環境を整えてくれたレヴァイアタンには頭が上がらないし、命令されずとも彼に付き従う者も多いのだ。
さて、そのレヴァイアタンは、魔法で隔離した善悪を持たない危険巨大海洋生物達への餌やりの真っ最中だった。以前は専用の給餌係にお願いしていたのだが、猛毒を吐かれて死に至ったり、食糧と勘違いされて捕食される等のトラブルが発生した為、レヴァイアタンとラハブで分担して餌やりを行う事となったのだった。
仮(人魚)の姿では流石に捕食されてしまう恐れがある為、レヴァイアタンは本来の巨大な海竜の姿に戻ると、死んだシャチ30匹が入った巨大な漁網を魔法で浮かせて移動し、目的地の場所まで辿り着くと、声を掛けた。