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青い欲情~男と女の色模様~
第22章 エピローグ

新婦さまの用意が整いました。

結婚式場の係の女性が新郎の控え室にやって来て
おごそかにそう告げた。

「どれ、一目花嫁を拝見してくるかな」

いそいそと春彦が席を立って控え室を飛び出そうとする。

「やめなさいよ、新婦さんのご家族にゆっくりと時間を差し上げるものよ」

清美が席を立った春彦の袖を引っ張って
もう一度着席しろと促す。

「そんなことを言ったって早く見たいじゃないか」

「父さん、落ち着けよ
何もあんたの結婚式じゃねえんだから」

そう言う僕も着なれないタキシードなんかを着せられて、どうにも落ち着かない。

そんな頃、新婦側の控え室では
ウェディングドレスを身にまとった沙織が
初めて上京してきた母親を前に
「母さん…今まで育ててくれてありがとうございました」と
こちらもまた結婚式あるあるではないけれど
いつもの陽気な笑顔を消して
殊勝な面持ちで隣に座る母親の一美に頭を下げた。

「よしてよ、短大を卒業したと思ったら、
私一人を残して家を飛び出して東京に行ってしまったあんたを当時は死ぬほど憎んだんだから」

「でも、育ててくれたことには変わりはないわ」

「まあね…でも、男遊びが盛んなあんたが一人の男と契りを結ぶなんていまだに信じられないわ…
ほんとにいいの?あんな子で…」

沙織の母親は新郎を「あんな男」でもなく「あんな奴」でもない「あんな子」と表現した。
それもそのはずで、新郎は新婦の沙織よりも一回りも年下の明人だったからだ。

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