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ガトーフレーズ
第9章 gâteau pyrénées
雪に降られるのに任せていると、息をきらして俊太が走ってきた。

「莉乃さん……。雪降ってきたから心配になって……」

そう言うと、傘を差し出した。

「どうしてまだいるんですか?」

「……この公園が、好きだから…………」

「……そか。でも、もうすごく寒いから、送らせてください」

「……ありがとう」

無言で歩くいつもの道。

家の下についたとき、俊太が口を開いた。

「俺、ほんとに莉乃さんのこと好きだったから。短い間だったけど、ほんとに楽しくて幸せでした……」

そう言って、柔らかく、莉乃の肩を抱きしめた。
あたたかくて、安心してしまいそうになる……。



「…………ありがとう……それじゃ」

坂を一気に昇って、家へ急いだ。

苦しくて、悲しくて、愛しくて、愛しくて、愛しくて。

「俊太……」

呟いたら、どれほど好きか思い知って、止めどなく涙が溢れた。

楽しくて、幸せだった。
俊太のすべてが、本当に大好きだったのに……。
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