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第48章 ジレンマ

「哲人《てつと》さん、君は大学《ここ》で取り組んでいた研究の成果が認められたので表彰されたのだね。」
「はい。」
「そのあとはどうするのかな？…ここにいるのかな？」
「ぼくは、研究室の主任ですよ!!」
「それだったら、君にはお嫁さんは必要ないと思うよ。」

榎列《えなみ》から過度に優しい声で言われた哲人《てつと》は、おどろいた声で言うた。

「それはどう言う事でしょうか？」

榎列《えなみ》は、過度に優しい声で言うた。

「わたしは、いじわるで言うたのじゃないのだよ…きみのためを思って言うたのだよ〜」
「ここで研究をすることがそんなにいかんのでしょうか？」
「いかんとは言うてないのだよ…きみがここで研究をつづけたいと言うのであれば、きみのカノジョを譲ってくれと頼んでいるのだよ〜」
「なんでそんなリフジンなことを言うのですか!?」
「わたしは、うちの職場の男性従業員《わかいしゅう》にチャンスを与えてあげたいのだよ…どうしても結婚したいと言うのであれば、大学《ここ》をやめてくれと言うてるのだよ…わたしは…おばあさまのお怒りを鎮めるために大学《ここ》をやめろと言うてるのだよ…」
「オドレふざけるな!!」

（バシャ!!）

思い切りブチ切れた哲人《てつと》は、大きめのタンブラーに入っていたミネラルウォーターを榎列《えなみ》の顔にぶっかけた。

いとは、ものすごく怒った声で哲人《てつと》に言うた。

「哲人《てつと》!!なんで榎列《えなみ》さんに暴力をふるうのよ!!」

思い切りブチ切れた哲人《てつと》は、榎列《えなみ》のこめかみをグーで思い切り殴りつけて倒したあと学食から出た。

いとは、全身をブルブルと震わせながら怒り狂った。

哲人《てつと》にどつき回された榎列《えなみ》は、にえきらない表情を浮かべていた。

時は、夕方６時半頃であった。

またところ変わって、大番頭《おおばんと》はんの家の特大広間にて…

テーブルにいとと明憲《ムコハン》とゆらさんの３人が座っていた。

沙都水《さとみ》とあかりは友人と会っていた…

拡憲《ひろのり》は、スイミングスクールにいる…で食卓にいなかった。

この時であった。

ゆらさんが真ん中に置かれている大皿に盛られているたくあんをはしでつまんだあと口に入れようとしたので、いとが怒った声で言うた。