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乳房星(たらちねぼし)−1・0
第60章 だってしょうがないじゃない
「奈保子《なおこ》さん、いいんじゃないの?」
「ゆらさん。」
「奈保子《なおこ》さんは、結婚にしばられるのがイヤだったのね。」
「その通りです。」
「せやせや…結婚なんかしない方がいいわよ。」
「もちろんですわ。」
「資格を取りたいと言うたね。」
「ええ…そのために必要なお金を稼ぐために、ワーキングホリデービザを取得しました。」

いとは、おどろいた声で言うた。

「外国へお金を稼ぎに行くって〜」

ゆらさんは、めんどくさい声で言うた。

「おかーちゃん、今どきのこたちはワーキングホリデービザを取って海外へ行く取って…と言うのが多いのよ…」
「お金を稼ぐのだったら、生保会社《かいしゃ》でもできるわよ~」
「おかーちゃんはなにが気に入らんねん!!」
「気に入らないのじゃなくて〜」
「奈保子《なおこ》さんは、温和な環境にい続けたらダメになるからと思ってアクションを起こしたのよ…それのどこがいかんの!?」
「いかんとは言うてないわよ…だけど、その前に…親御さんに…」
「なんでそななめんどいことせなアカンねん…」
「ゆら!!」
「おかーちゃん!!奈保子《なおこ》さんの人生はおかーちゃんのもんじゃあらへん…」
「分かってるわよ〜」
「ほんなら、奈保子《なおこ》さんの思う通りにさせてよ~」
「分かったわよ〜」

奈保子《なおこ》さんは、突き放す声でいとに言うた。

「すみません…1時間後に出発するラピート(南海電鉄特急)に乗る予定があるので…行かせてください…失礼します…」

(ゴロゴロゴロゴロ…)

このあと、奈保子《なおこ》さんは特大スーツケースを持って旅に出た。

いとは、ものすごく不満げな表情で奈保子《なおこ》さんの背中《せな》を見つめた。

(ゴーッ…)

それから2時間後であった。

奈保子《なおこ》さんが乗り込んだ全日空機が関西国際空港から飛び立った。

いとたちに行き先を伝えずに旅に出た奈保子《なおこ》さんは、なにを思いながら窓に写る景色を見つめていたのか?
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