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鼓膜から流れ込む愛
第2章 密着した身体
「こんばんは」

「いらっしゃいませ、こんばんは。今日もお疲れ様です」

「あ、ありがとうございます」

私はあれからLentoに通っていた。

出来るだけ長く居たいけど、お財布の事情もあるので、大体週に1~2回程。

(私が高給取りとか富豪だったら毎日来れるのにな…)

そう思いながらも現実はそう甘くない。

「今日は何飲みますか?」

「そうだな…何か甘いカクテルをください」

「かしこまりました」

大雑把なオーダーで困らせてないだろうか。

でも片平さんの作るお酒は外れたことがない。

私が貧乏舌なだけかもしれないが、私が知ってるような物を適当に頼むより、飲みたい物の気分を伝えた方がよっぽど確実な気がする。

そんな事を考えている間も片平さんは手際良くカクテルを作っていく。

(相変わらず絵になるなぁ…)

大きな体が、手が、細かく丁寧な作業をしている姿はより魅力的に見える。

「お待たせ致しました。エンジェルズ・キッスです」

「おぉ…」

出てきたのは黒と白の二層になってる、一見コーヒーゼリーのようなドリンクだった。

グラスの上にはピンのような物に刺さった赤い小さな果実、チェリーだろうか。

「美味しそう…いただきます」

飲んでみると、カカオの香りとミルクの甘味を感じる。

「チョコミルクみたいですね!甘くて美味しい…」

仕事で酷使した頭や身体に染み渡る。

「喜んで頂けて良かったです」

そう言いながらにっこりと微笑む片平さん。

(お酒も染みるけど、仕事で疲れた後はこの声と笑顔が一番効くわ…)

相変わらず沼から抜けられていない事を再認識し、その後も片平さんと雑談を続ける。
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