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ストリート・キス
第1章 ストリート・キス
 彼女が自分よりも九歳も上だと知ったのは、歓送迎会も中盤に差し掛かり、僕も周囲の先輩たちもアルコールが回って良い気分になった頃に、気づいたら隣に座って赤い顔でビールを注いでくれた彼女本人の口からだった。
「江田くん。もう仕事慣れた?」
「はい。えっと、なんとかやってます」
 宴会場になった居酒屋の10畳ほどの広さの個室。端っこの方にいたはずの彼女、松木香奈美(まつきかなみ)がいつのまにか隣にいる。そこは元々、佐藤係長の席だったが、当の係長はどこへ行ったのか、目で探していたら上山さんという中年の男性と大声で話し込んでいた。他の人たちも、それぞれ酒の入ったグラスを持ち、席を移動して好き勝手に話し込んでいる。
 すぐ隣にいる松木さんとの会話にも大きな声でしゃべらないと聞こえないほどににぎやかだった。
「江田くんは新卒で入社だから23歳?」
「そうっすね。10月の誕生日で」
「若いなあ。羨ましいわ」
 彼女の上気した顔をチラッと見る。けっこうかわいい。
 …羨ましいって…この人、若く見えるけど、いくつなのかな。
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