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続ストリート・キス
第1章 続ストリート・キス
 今こうしてこの腕で抱きしめてキスをしている彼女が人妻であるという事実が、僕にはどうしても実感が湧かないのだ。
 押し付けていた唇を離した彼女が何も言わずに腕を絡めてきた。二人でくっついて横に並んでまた歩き出す。
「んー。あれぇ」
「どうしました」
「ないなあ。この辺のはずのに」
 何がですかと聞いたら、かわいらしい、でも普通の口調でこう言った。
「ホテルよ。この辺にあったはずなんだよね」
 「…は?」
 …ホテ…ル?
 …今、ホテルって言った…よな?
「あ、あの…」
「帰ろっか」
「えっ、ええっ?!」
 足取りも軽く、来た道を戻り始めた彼女。僕のぐるぐる回る混乱した頭が勝手に情報検索をし、現在地から一番近いラブホテルをピックアップした…けれど、その情報を彼女に伝える勇気が出なかった。
 …なんなんだ。この人は。何を考えているのかぜんぜんわからないぞ。ヤバいな。ヤバい。僕は貴女に…ぞっこんだよ。
「あの、僕は、松木さんが」
「香奈美って呼んで」
「僕は…香奈美さんが…す」
好きですって言いかけたのに「ここでいいわ。じゃあね」バイバイと小さく手を振って去っていく彼女の背中へ、力無くその言葉をつぶやいた。
 …好きです。大好きなんです。
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