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続続々ストリート・キス
第1章 続続々ストリート・キス
梅雨が明けた七月半ばのある日。仕事を終えた彼女と僕は、都内のとあるホールで催されるクラシックのコンサートへ行った。チケットは事前に彼女が予約してくれた。
クラシックジャンルの音楽が僕たちの共通の趣味ではあるけれど、彼女はマーラーとモーツァルトが好きで、好きすぎてウィーンへ何度も行くぐらい好きで、でも僕はワーグナーが好きで、クラシックに興味がない人にはわからないだろうが、彼らウィーンゆかりの偉大なる作曲家とドイツ愛に満ちた尊大なワーグナーとの間には高い壁があるのだ。プライベートでの彼女はとてもかわいらしい人だが、譲歩できないものはハッキリそう言った。
「私、ワーグナーは嫌い」
…そうですか。残念です。
とは思っていても言わずに
「僕はモーツァルト、たまに聴きますよ」
生まれてから数回しか聴いたことがないけれど嘘はついていない。
嘘といえば、彼女は嘘をつかない人だった。仕事でもプライベートでも、嘘で取り繕えばうまくかわる場合でも、黙って答えないか、もしくは言葉を選びながらその時の彼女の気持ちを正直に言う人だった。彼女のそんな性格はやがて僕を苦しめることになる。
クラシックジャンルの音楽が僕たちの共通の趣味ではあるけれど、彼女はマーラーとモーツァルトが好きで、好きすぎてウィーンへ何度も行くぐらい好きで、でも僕はワーグナーが好きで、クラシックに興味がない人にはわからないだろうが、彼らウィーンゆかりの偉大なる作曲家とドイツ愛に満ちた尊大なワーグナーとの間には高い壁があるのだ。プライベートでの彼女はとてもかわいらしい人だが、譲歩できないものはハッキリそう言った。
「私、ワーグナーは嫌い」
…そうですか。残念です。
とは思っていても言わずに
「僕はモーツァルト、たまに聴きますよ」
生まれてから数回しか聴いたことがないけれど嘘はついていない。
嘘といえば、彼女は嘘をつかない人だった。仕事でもプライベートでも、嘘で取り繕えばうまくかわる場合でも、黙って答えないか、もしくは言葉を選びながらその時の彼女の気持ちを正直に言う人だった。彼女のそんな性格はやがて僕を苦しめることになる。