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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第16章 神に捨てられた子
「──…」
逞しい腕と胸に包まれ、その体温を感じる。
今のシアンは熱を帯びているから、バヤジットの肌はひんやりと心地良かった。
「不思議……ですね。貴方にこうされると……痛みがやわらぐ気がします」
「そうか」
「嘘ではありませんよ」
「わかったから、動くな」
「…っ」
シアンが首をひねってすぐ横の顔に話しかけようとすると、それをピシャリと止められた。
背に添えられただけで肌を撫でようとしない手が、力強くシアンを引き寄せる。その僅かな強引さに、がらにもなくシアンは驚いてしまった。
「動くな…!!」
「……は い」
いつにも増して凄みのある声で、囁かれる。
そんなバヤジットの腕はいつまでも固く、そして頑(かたく)なで、シアンは思わず悪戯をしかけたくなってしまう。
でも──
「──…」
そうしたら焦った彼が離れてしまいそうで
この時間がすぐに終わってしまいそうで
「……」
まだもう少し──このままで、だから
シアンは大人しく瞼を下ろした。
「……シアン、お前の目は」
「──…」
「暗闇に閉じ込められようとも、赤くはならなかったのだな…」
「…そう、ですね」
寝かしつけるように小さな声で話しかけてくる男に、シアンはうとうとと、ゆっくりと言葉を返した。
「それだけが、他のギョルグとは、違いました」
「……」
「瞳の色だけは……変わらな かっ た……」
こんなに無防備な状態を、この男に晒すだなんて
間違っている。シアンは心の奥底で自答しながら、彼の腕に抱かれて眠った──。
──…