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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第44章 復讐者の記録──終章




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 キサラジャ暦 325年

 キサラジャの為政者 ラティーク・タランが、帝国の裁判にて、地下用水路(カナート)破壊、および、火槍(シャルク・パト)密造についてを認める。

 さらにそれらは全てスルタン・アシュラフの勅命であったとして、今なお首都ジエルでは、兵器の製造が進んでいるとも自白──。

 これを明らかな敵対行為であるとした帝国は、キサラジャ制圧に乗り出した。



 しかし、帝国軍による首都の包囲が始まったその日

 王都で最も高い古塔から狼煙(のろし)が上がる。

 この時 古塔では、ひとりの美しい青年が、血で赤く染めた衣をひるがえし、群衆が見上げる前で右手を高々と掲げていた。

 青年の右手には、同じく " 手 " が握られていた。

 其れには王族の証たる刻印が刻まれており……混乱に陥る民衆に向けて、青年は告げた。




 大陸の和平を乱し、国を危機におとしめた愚かな王は、私がこの手で討ち取った!


 排除すべき悪が取り除かれた、今、生まれ変わろうとする我らに帝国と争う意義はない。


 街道と商業によってこそ成り立つ我が国の繁栄は、敵対ではなく友好をもって築かれるからだ。


 にも関わらず、水の恩恵に固執し、傲(おご)り、身分と城壁で囲い込むだけの愚かな為政者たちは…我が国に孤立と貧窮をもたらした。


 私がこの悪癖を叩き割る。


 帝国の皇帝よ!


 貴公が先帝から政権を奪還し、悪政をしりぞけたその手腕……実に見事とお見受けする。


 私も同じ道を行く。


 貴公もその一肩(ひとかた)をかつがれよ!









 其処に立つ青年は、まぎれもない王族の風格を集まった民衆に知らしめた。

 沈黙が、ざわめきに変わり

 それが歓声になるまでそう長くはなかった。

 包囲を中断した帝国軍が、夜になり、祖国からの命令で撤退を始めるまで──

 青年は片時も動かず、その場に立ち続けたという。

 絶え間なく揺れる遠くの砂丘に目を向けて…沈みゆく陽の日に、別れを告げながら。












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