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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第8章 復讐者の記録──壱
『 どうやら今夜もこの店に、僕に釣り合う旦那さまはいないようですね 』
聞き間違いかとざわめく男達を後目(しりめ)に、礼儀正しく亭主に頭を下げる。
そして彼女の背後に見知らぬ少年を見付けた。
『 この子供は誰です?初めて見ました 』
『 あ、ああ、街の外れで拾ったばかりの子だ。丁度いいからあんたが世話してやりな、ヤン。どうせ今日のあいつ等じゃあんたは買えないよ 』
『 そうみたいですねぇ 』
近くから顔を覗き込んでも、そらそうとしない。
『 はじめまして、お前、名前は…── 』
『 …… 』
『 まぁどうでもいいかそんなもの 』
焦点の定まらないままゆらゆらと漂うばかりの瞳を、青年はじっと見つめた。
『 キレイな翠だ 』
『 …………? 』
『 ……、おいで 』
ヤンと言う名の青年は、少年の肩に手を添えた。
ろくに反応しないので、言ったことを理解できているのかどうかも知らないが、背中を軽く押すようにして少年を連れて行く。
不満不平で膨れ上がる店の戸を閉め、風の吹き荒ぶ歓楽街を歩いた。
──…
─────……