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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~
第3章 弐
二年半前に突如としてこの店先に現れた美しい娘。幾ら逢いたいと思っても、二度と逢うことはなかったのに、娘は半年後に再び、店先に座るようになり、以後はずっと、ここにいた―。
お都弥の父親が万葉集という難しい歌集を愛読していたということからも、お都弥がそれ相応の財力と教養を併せ持つ家の娘だとは察せられたものの、それが武家ならばともかく町人ともなれば、それこそ大店の娘でなければ叶わぬことだと嘉門は考えたこともあった。