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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~
第3章 弐
 お都弥は、怒られているというのに、何故かいっそう嬉しげに微笑んだ。
 その日、嘉門は母のためにと、お都弥が勧めてくれた椿の絵蝋燭を一本買い求めた。
 あの身分がすべてという母を説得するのは容易なことではあるまい。最悪、嘉門は石澤の家名をも何もかも棄てねばならないだろう。
 だが、それでも良いと嘉門は考えていた。
 たとえ、何を犠牲にし、引き替えにしたとしても、お都弥を手放すよりは、はるかにマシだ。
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