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第3章 弐

「そんなに破(や)れ鐘のようなどら声で怒鳴らなくっても、聞こえてますよ。よっく、聞こえてますとも。石澤のお殿さま」
「あれは、どういうことだ」
　物凄い見幕の嘉門にも、内儀は少しも動じる風はない。大抵の人間であれば、長身で眼には鋭い光を宿した彼がひと睨みすれば、縮み上がるのだが、この内儀はつかみ所がないというのか、いつもにこにこと笑っているばかりだ。