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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~
第2章 壱
「そ、そうなのか。よく判った」
 嘉門は這々の体で応え、くるりと背を向けた。呆気に取られている娘を後に、直立不動で歩いてゆく。まさか自分が今、両手、両脚を同時に動かしているという実に珍妙、かつ器用な歩き方をしていることなぞ、当の嘉門は知りもしなかった―。
 極度の緊張がなしたものだったが、屋敷に帰ってから、嘉門は何度、その日の自分の情けない姿を思い出して歯がみしたかしれない。
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