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さようならも言わずに~恋は夢のように儚く~
第3章 弐
―あまりこの母を甘くご覧にならないで下さりませ。噂と申すものは、屋敷の奥にいても、自ずと耳に入ってくるものです。しかも、それが悪しきものであればあるほどに、人の口に戸は立てられぬと申しますから。
 誰か、母の意を受けた者が嘉門の身辺を見張っているのだ、その時、嘉門は己れが母の手の内で躍らされていることに、初めて気付いた。
―悪は千里を走ると申しますよ。
 母が言い添えたひと言が、嘉門を激怒させた。
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