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生贄の 人妻
第3章  森の部屋へ
土曜日

麻衣は ドレッサーに向かって 頬にパフを当て 鏡の向こうの
拓哉を見つめ 溜息を漏らした

・・・何の為の 化粧・・・・

腹の出た 森の姿を思い出す 油切った顔で 寄せて来る顔に
分厚い唇から差し出される 舌が体を這い 大きな手が
麻衣の白い肌を 舐める様に這わせる姿を 思い浮かべ
思わず 身震して 鏡の向こうで 
哀しそうに見つめる 拓哉に視線を合わせ
明るい声を出して

「 お夕飯 今日の分と明日の 冷蔵庫に用意して有るから 」

声を掛けて 立ちあがり 普段着を脱ぎ 用意した 薄緑の
ワンピースを被ると 拓哉の傍に行き 

「 背中 お願い 」

拓哉が立ちあがり ファスナーを上げ フォックをかけて呉れたのが
分かると 振り向いて抱き着いて

「 月曜に 帰って来るね・・・ 」

バックを持ち 哀しそうな顔をする拓哉を見ない様に 玄関を出た
ローヒールのパンプスが タイル張りのマンションの床に音を立て
駅に向かって 歩きながら 麻衣は悲しみに沈んで 
歩く速度が遅く成ってしまう

今日 明日 油切った顔の 森に抱かれに行く
部屋の掃除と 夕飯の用意で 終わらない事は先週 分かっていた
おぞましい 想いに 麻衣の顔は 悲しみを浮かべて 駅の改札で
スイカをタッチして 改札を抜け 電車に乗り 森が寄越した
ラインから 降りる駅を ドアの上で表示する液晶を見て 溜息を付き
走り抜ける 車窓の風景を見ながら 先週 先々週の夜を思い出していた


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