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月の裏で会いましょう-revised-
第8章 ずっとそばにいて
軽自動車で山を下り、畑が続く道をたどって昴の住む倉庫に着いたころには、もう空は白み始めていた。
アルミサッシの扉を開けて中に入ると、小さなラジオから軽快な音楽が流れ、頭上の窓からは朝日が差し込んでいた。
鬱蒼と茂った木々が日差しをさえぎる薄暗い山荘とは違って、昴の部屋には燦燦と日が差し込んでいる。
私が背後に引きずっていた影すらも、真っ白に打ち消してしまうほど明るかった。
歯を磨いていた昴は、私の方を振り返ると、思い出したように目を見開き、シンクの脇に置かれたプラスチックのコップから、新品のピンク色の歯ブラシを取って差し出した。私のために用意してくれていたようだった。
「一緒に歯、磨こうよ」
壁に掛けられた、茶ばんで汚れた小さな鏡に向かって、並んで歯を磨く。ただそれだけのことなのに、こみ上げてくる嬉しさが、涙になって滲んだ。
アルミサッシの扉を開けて中に入ると、小さなラジオから軽快な音楽が流れ、頭上の窓からは朝日が差し込んでいた。
鬱蒼と茂った木々が日差しをさえぎる薄暗い山荘とは違って、昴の部屋には燦燦と日が差し込んでいる。
私が背後に引きずっていた影すらも、真っ白に打ち消してしまうほど明るかった。
歯を磨いていた昴は、私の方を振り返ると、思い出したように目を見開き、シンクの脇に置かれたプラスチックのコップから、新品のピンク色の歯ブラシを取って差し出した。私のために用意してくれていたようだった。
「一緒に歯、磨こうよ」
壁に掛けられた、茶ばんで汚れた小さな鏡に向かって、並んで歯を磨く。ただそれだけのことなのに、こみ上げてくる嬉しさが、涙になって滲んだ。