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月の裏で会いましょう-revised-
第2章 初めての夜
場所は、渋谷から十分ほど歩いた場所にある“TAMARIBA《たまりば》”という、お気に入りのビアバーだ。
古いマンションの一階をリノベーションした隠れ家風の店のドアを押し開ける。入るなり、武骨なロックのサウンドと人々の話し声が私を包んだ。
ドアの両脇にある二人掛けの席ではカップルたちが額を寄せ合って話している。
数歩進んだところに七人ほど座れるカウンターがあって、奥のテーブル席ではすでに男性グループが、ジョッキや長いグラスを片手に楽しんでいた。
テーブル席の間を通り、カウンター席の、出入り口に一番近いスツールに座る。
目の前に立っておしぼりをくれるマスターの背後には、タップと呼ばれるレバー付きのビールの注ぎ口がずらりと並んでいる。
今日はどんなビールが飲めるだろう。手を拭きながら、酒瓶が並ぶ棚の上の黒板に書かれた「今日のオンタップ」を見上げた。
ふと横に視線をやると、カウンターの一番奥のスツールに、男性が浅く腰かけていた。
私より五歳くらい若い、二十代前半くらいの男の子だった。カウンターには背を向けて、壁の棚に飾られたレコードを見ている。
古いマンションの一階をリノベーションした隠れ家風の店のドアを押し開ける。入るなり、武骨なロックのサウンドと人々の話し声が私を包んだ。
ドアの両脇にある二人掛けの席ではカップルたちが額を寄せ合って話している。
数歩進んだところに七人ほど座れるカウンターがあって、奥のテーブル席ではすでに男性グループが、ジョッキや長いグラスを片手に楽しんでいた。
テーブル席の間を通り、カウンター席の、出入り口に一番近いスツールに座る。
目の前に立っておしぼりをくれるマスターの背後には、タップと呼ばれるレバー付きのビールの注ぎ口がずらりと並んでいる。
今日はどんなビールが飲めるだろう。手を拭きながら、酒瓶が並ぶ棚の上の黒板に書かれた「今日のオンタップ」を見上げた。
ふと横に視線をやると、カウンターの一番奥のスツールに、男性が浅く腰かけていた。
私より五歳くらい若い、二十代前半くらいの男の子だった。カウンターには背を向けて、壁の棚に飾られたレコードを見ている。