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月の裏で会いましょう-revised-
第2章 初めての夜
酒を酌み交わす人たちに紛れて一人、並んだレコードたちを物色しシングル盤を一枚取りだした。

カウンターの端に置かれたターンテーブルに乗せて針を落とすと、頬杖をついて音楽に聞き入りながらレコードジャケットを眺めていた。
それが、昴だった。


私は普段、北関東の高原にあるリゾート施設「フォレスト」で正社員として働いている。

「施設内のレストランで提供するホワイトエールに合わせたフードメニューの提案をするように」

とマネージャーから指示された私は、ホワイトエールと料理のマッチングを調査するため休日を利用して上京し、ペアリングに定評がある“TAMARIBA”に来たのだった。

ビールとの相性を試すため、マスターのうんちくを聞きながらめいっぱい料理を注文した。


カウンターに四皿ほど並んだところで、店の奥から三十代半ばくらいの男性がやってきて隣に座った。その全身から濃厚な酒気が漂って、私はそれとなく顔を背けた。

男性と同様オフィスカジュアルに身を固めた連れの一行は、「また始まった」「ほどほどにしろよ」をあきれ顔を男性に向けながら、ぞろぞろと店を出て行く。
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