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月の裏で会いましょう-revised-
第2章 初めての夜
小学校の席替えで隣になったときの挨拶みたいな、無垢な言葉とは裏腹に、声にはどことなく淫靡な響きがあって、私は不意に、顔が熱くなるのを感じた。

それから一時間もたたないうちに、私たちは円山町のラブホテルの一室のドアを、じゃれあって抱き合いながら体で押し開け、唇を貪りあいながらベッドに身を投げ出したのだった。


そして夜明け前、枕に頬をぺたりとつけて子どものようにやすや眠る昴を残し、私は部屋を出た。始発電車もまだない時間だった。カラスがゴミをあさる道を速足で歩き、道玄坂でタクシーに乗り込んだ。

そうやって私は、離れがたい思いを引きずったまま、身を引き剥がすように、彼から逃げ出したのだった。
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