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月の裏で会いましょう-revised-
第19章 目覚め
「ここに運ばれるまでの記憶が、まったくありません。だから、お父さんのこともわからなくて・・・ごめんなさい」
「君が謝ることじゃない。無理に思い出すことはない。今はゆっくり休んで」
男性は緊張の中にも、どこかしらほっとしたような表情を浮かべ、談話室の座席に私を座らせた。
「本当に、何も覚えていない?」
訊かれて私はうなずいた。柳ケ瀬は隣りに腰かけ、前を向いた。咳払いをしてから、言葉を手繰るように話し始めた。