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月の裏で会いましょう-revised-
第20章 月の裏側へ(1)
───「君にはいま、育てのご両親がいる。俺は君の父親だと堂々と言えるようなことは、何もしていない。君にとって一番の存在は、今のご両親だ。それだけは、言っておきたい」
柳ケ瀬の言葉を思い出した。おそらく産みの両親にはすでに今の生活があるのだろう。私は育ての両親と陸翔にだけ挨拶をして、沖縄に発った。
両親は不安げでもあり、どこかホッとしているようにも見えた。他人のようになってしまった娘との息が詰まるような生活に、疲れ始めていたのかもしれなかった。
正直なところ、一人で知らない土地に行くことができて、私はほっとしていた。
両親とも陸翔とも、これで決定的な距離ができてしまうだろう。それは申し訳なく思ったけど、私は私自身を、しっかり保つこと。それが先決だと思った。記憶が戻った暁には、また家族としての絆を取り戻す努力をすればいい。