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一夜限りでは終わりたくない
第1章 一夜限りの関係
少しの時間をおいて、藤堂副社長は静かに話し始めた。
「桜井さん…失礼なことを聞くが許してくれ…君の部署から聞いたのだが…同棲中の彼が原因で帰る家が無いというのは本当か?」
突然自分のことを聞かれて驚いた。
「あ…ええと…本当です。なので、適当なところで降ろしてください。どこかのビジネスホテルを探します」
すると、藤堂副社長は独り言のように小さな声で呟いた。
「やっぱりこの子が…俺が抱いた女だったとは…偶然だな…」
藤堂副社長の呟きは、聴き間違えかと思い、もう一度確認する。
「今、なんて仰いましたか…あの…もしかして…私、藤堂副社長に…」
藤堂副社長は言葉をかぶせるように返事する。
「お前の思っている通りだ。…俺は失恋に付け込んだ悪い男だ。」
なんということだろう。
私を抱いたのは藤堂副社長に間違いないようだ。
それを聞くと何だか急に顔が熱くなる。