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一夜限りでは終わりたくない
第1章 一夜限りの関係
藤堂副社長は運転している秘書に声を掛ける。
「このまま直接、俺の家に向ってくれ」
「はい。かしこまりました」
藤堂副社長の言葉を聞いて驚いた。
俺の家とはどういうことなのだろうか。
私も連れて行くという事なのか。
「私は…どこで降ろして頂けるのでしょうか?」
藤堂副社長は、大きく首を振った。
「俺の家に連れて行く…安心しろ、俺は実家暮らしだ。俺一人じゃない」
「ご家族がいるところに私なんかが伺ってよろしいのですか?…やはり降ろしてください!」
何だかとんでもないことになっているようだ。
ただ、私を抱いた男が藤堂副社長と知り、なんだか少し嬉しい自分がいることに気が付いた。
嬉しいなんて本当は不謹慎だと頭では分かっている。
お詫びは伝えたかったが、それ以上の感情を持つべきではないことは解っている。
頭でごちゃごちゃ考えているうちに車は大きなお屋敷の前で止まった。
夜で暗いため良く見えないが、どうみてもどこかの高級旅館のような佇まいだ。
時代劇にでてくるような伝統的な数寄屋門。
なんだかタイムスリップしてしまったような豪華な日本家屋のようだ。
正面の大きな門の横に付いている、小さな通用口を開けて藤堂副社長は声を掛けた。
「そんなところに立ってないで、早く中に入ってこい!」