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一夜限りでは終わりたくない
第2章 曖昧な関係
「さぁ、こっちだ行くぞ。」
私が着替えを済ませて部屋を出ると、藤堂副社長は足早に歩き始めた。
昨日は暗くて気が付かなかったが、とても長い木の廊下は隅々までピカピカに磨かれており、なぜか張りつめたような緊張感がある。
少し歩くと藤堂副社長は大きな観音開きのドアに手を掛けた。
「俺の家族がいるが気にするな…」
気にするなと言われても、どうして良いのか分からない。
そもそも見ず知らずの女が朝食を頂きに来るなんて、考えられない事では無いのだろうか。
それとも藤堂副社長にしたら良くあることなのだろうか。
扉を開ける寸前に、それを止めるように声をだした。
「あの…私…ご迷惑じゃないでしょうか…朝食のご準備とか…」
すると、表情を変えずに藤堂副社長は話し出した。
「料理長には早朝に一人分多く作ってもらうように言ってある。家政婦にも一人分多く席を用意させてあるから問題ない。」
問題ないなんて、あり得ない話だ。
私が言葉に困っているうちに、藤堂副社長はドアを開けてしまった。