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一夜限りでは終わりたくない
第2章 曖昧な関係

翔也が部屋を出て少しすると、弾けて上がっていた私の息も落ちついてきた。
心地良い脱力感を感じながら、眠気に襲われる頭で考えた。
なぜ翔也はすぐに部屋を出てしまったのだろうか。
続きがしたい訳ではないが、何か少し寂しい気持ちもあった。


それから一週間。

朝食の時には当然顔を合わせるが、翔也は仕事も忙しいようで、その後ろくに話もしていない。
翔也の家族は普通に接してくれている。それだけは救いだ。
突然転がり込んだ怪しい女なのに、家族も含め使用人の方々も優しく接してくれるのは、心に余裕がある人達だからなのだろうか。

考えてみれば、翔也は成り行きで私を家に置いてしまったのだと思う。
後悔していても不思議ではない。
なるべく早く翔也の家を出ることを考え始めていた。

会社に着くと、同期で友人の里香が少しがっかりした表情で近づいて来た。

「ねぇ、藤堂副社長のすごい噂を聞いたの!…今度、新しく女性の専務が海外支店からこっちへ戻ってくるらしいの…凄い美人で有名なんだって。その女性がさぁ…実は藤堂副社長の彼女だって噂だよ…やっぱりイイ男には彼女がいるんだよね…がっかりだよ。」

その話を聞いた瞬間、私は飲んでいたコーヒーを机に落としてしまった。
里香が大きな声を出して慌てているが、言葉が耳に入ってこない。
驚きと同時に、何かが胸に突き刺さる衝撃を覚えた。

翔也に彼女がいるのならば、これ以上お世話になることは出来ない。





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