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一夜限りでは終わりたくない
第3章 元カノ
早乙女専務の言葉は気になったが、直接仕事で係わることはない。
私は少し油断していたのだった。
今日は以前に営業したお客様から契約を頂く約束になっている。
私は上司の高山リーダーと同行することになっていた。
事前に約束を取っていたので今日は形式的な挨拶程度だった。
しかし、大きな契約の為、高山リーダーが同席した。
先方の会社について、約束の契約書を広げて担当を待っていた。
その時、いつもの担当ではなくこの会社の専務だという男性が現れたのだ。
「今日は弊社まで来ていただき、申し訳ないがこの契約は白紙にして欲しい。」
いきなり現れたこの男性は、私達に驚くような言葉を言ってきたのだ。
高山リーダーは動揺しながらも、専務に尋ねたのだった。
「先日のお話では今日ご契約をいただけると仰っていましたのに、何かございましたか?」
すると、その専務は私の顔を見てニヤリとした。
「商品の問題では無いのですよ。御社のご担当が余りにも、ふしだらというか、ハレンチなので御社の品位を疑いましてね。」
高山リーダーは顔色を悪くして質問をした。
「担当とは…桜井の事でしょうか?桜井はそのような女性ではございません。」
すると、専務はとんでもない事を言い出したのだ。
「聞くところによると、彼女は同棲している男性が居ながら、御社の上司を誘惑して騙したあげくに今度は上司と同棲しているとか…そのようなご担当ですと、我が社の社員も騙されていないかと心配になりましてね。」
なんという言いがかりなのだろうか。
上司を騙して誘惑とは藤堂副社長のことだろうか。
高山リーダーはその話を聞くと、いきなり私の方に向きを変えた。
「桜井さん、今の話は本当なのかな?」
「ち…ち…ちがう…違います。私は上司を誘惑して騙したりしていません。」
高山リーダーは思い出したように話し出した。
「桜井さん、そういえば君は彼と別れて家を出たと噂になっていたが、今はどこに住んでいるのかな?」