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君とメメント・モリ
第18章 死神の秘密
「最近反抗期で、私が何か言うとうるさいって言い返すのよ。実はね、昨日の晩も喧嘩になって、今朝も口をきいてないの。あなたが家であの子を迎えてくれたら、昨日のこともふっとぶはず・・・」
その時、対向車がいきなり反対車線に入り込んで正面から突進してきた。
重たい金属がぶつかり合う猛烈な破壊音のあと、アスファルトをひっかきながら鉄の塊はガードレールに突っ込んだ。
ひしゃげて車体の長さが半分ほどになった赤い車の中で、フロントガラスの破片を浴びて額を真っ赤な血で濡らした二人は、ゆらゆらと首を回して互いの安否を気遣うように向かい合った。
枝が折れるようなくぐもった不快な音が鳴り、不安定に女の頭がぐらりと揺れて肩から垂れ下がった。
血で赤黒く染まった顔の中で、二人は目だけをかっと見開いて見つめあっている。骨という骨が砕けているのに、まだ二人は死んでいなかった。
ボン、と間近で花火が炸裂するような音がして、車体が大きく跳ねた。後部座席に火が上がる。猛烈な高温のなか、二人は崩れて折り重なった。
「だめ、死んじゃダメ」
女の心の声がする。
「大丈夫か」
女に向かって男が叫んでいるが、熱を吸って焼けただれた喉からは、もう声が出ていない。
「二人とも、早く行こう」
翼は結界を目指し、二人を促した。
二人の魂を体から引きはがそうと強く念じるが、骨が砕け、皮膚と髪が焼けこげ始めても、二人は体から出ようとしなかった。
その時、対向車がいきなり反対車線に入り込んで正面から突進してきた。
重たい金属がぶつかり合う猛烈な破壊音のあと、アスファルトをひっかきながら鉄の塊はガードレールに突っ込んだ。
ひしゃげて車体の長さが半分ほどになった赤い車の中で、フロントガラスの破片を浴びて額を真っ赤な血で濡らした二人は、ゆらゆらと首を回して互いの安否を気遣うように向かい合った。
枝が折れるようなくぐもった不快な音が鳴り、不安定に女の頭がぐらりと揺れて肩から垂れ下がった。
血で赤黒く染まった顔の中で、二人は目だけをかっと見開いて見つめあっている。骨という骨が砕けているのに、まだ二人は死んでいなかった。
ボン、と間近で花火が炸裂するような音がして、車体が大きく跳ねた。後部座席に火が上がる。猛烈な高温のなか、二人は崩れて折り重なった。
「だめ、死んじゃダメ」
女の心の声がする。
「大丈夫か」
女に向かって男が叫んでいるが、熱を吸って焼けただれた喉からは、もう声が出ていない。
「二人とも、早く行こう」
翼は結界を目指し、二人を促した。
二人の魂を体から引きはがそうと強く念じるが、骨が砕け、皮膚と髪が焼けこげ始めても、二人は体から出ようとしなかった。