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淫夢売ります
第15章 淫らな紋章:求める罪
【淫らな紋章】

「世田谷署の者ですが、ちょっと、参考にお話をお聞きできますか?」
私はユメノと名乗ったこの店の女主人に警察手帳の顔写真部分を見せる。
この店は、とても狭く、奥のユメノがいる部屋というか空間には私が一人入るのがやっとなくらいだ。ただ、聞き込みは原則二人一組なので、暗幕の後ろには、後輩の吉井くんが控えている。

「はあ・・・ええと、桜井『あまね』さんでよろしいですか?」
私の下の名は「天音」と書いて「あまね」と読む。
「そうです」
「今日は、どういったご要件ですか?占い・・・なわけないですよね?」
今日、私がここ「夢占 モルフェ」に来たのは、世田谷署管内で起きた、公然わいせつ罪の被疑者の証言がきっかけだ。

「ユメノさんは河野裕之という名前に心当たりはありませんか?」
ユメノはちょっと視線を左にやり考える。名前を思い出そうとする人がたいていする仕草だ。
「いえ、すいません。心当たりはないです」
まあ、すんなりはいかないか・・・。

「実は、世田谷署管内で先月から今月にかけて公然わいせつ、平たく言えば露出狂が出没したの。それを先週逮捕したんだけど、その被疑者であるがここでカードを買った、と証言しているの」
「はあ・・・、それが先程の河野さんというわけですか?」
ユメノは気の抜けたような返事をする。

「少しお話を聞かせていただけますか?河野は自分が犯罪を犯したのは『モルフェのカードのせいだ』というようなことを言っています。ここではカードを販売していますか?」
可能な限り中立的で柔らかな口調を心がけてはいるが、心のなかでは疑いの気持ちが渦巻いている。実は、この被疑者だけではなく、都内で発生している痴漢、わいせつ事件の被疑者の多くが、ここでのカード購入を口にしている。

ここのカードはなにかある。
その何かはわからない。もしかしたら、性犯罪者達のグループにおける符号のように使われているのかも知れない。

「・・・カードはたしかに当店の商品です。そして、河野さんという方は当店にいらしたのですね。すいません、特別な場合を除いて、顧客の名前を確認することは少ないものですから」
「カードを売っている?」
「はい」

あっさりと白状した。こいつと性犯罪者たちには何か繋がりがある。
次のステップに行こう。
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