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淫夢売ります
第15章 淫らな紋章:求める罪
☆☆☆
その日の午後7時30分、私は再びモルフェの扉の前に立っていた。
やはり気になったのだ。「欲望に沿った夢を売る」という彼女の言葉が。

モルフェの木の扉を開く。カランカランと扉に付いているベルが音を立てる。
「いらっしゃいませ」
奥から、ユメノの声が聞こえる。

暗幕を開いて奥の空間に。店内の照明はあるものの、夜になると、この店はなおさら薄暗くなったように感じた。暗幕のそこかしこに星や月のようなモチーフが飾られて金銀の反射光を放っている。
昼間は気づかなかったが、香のような良い香りがほのかにする。

「あら・・・天音さん・・・いらしていただいたんですね?
 お客様としてですか?
 刑事さんとしてですか?」

うっ、とやや躊躇したものの。

「お客として来ました・・・。」
「そうですか!それは良かったです」
ユメノは無邪気に喜ぶ。その眼はやはり漆黒の闇をたたえている。この眼を見ていると、妙に気持ちがざわつく気がする。

「来ていただいたということは、夢占いではなく、夢の購入の方ですね。
 では、当店の仕組みについてお伝えします」

曰く、売っている夢は「淫夢」だと。
料金は前払い制、夢が万が一気に入らなくても返金はない。
料金は2万5千円、とのことだ。

私は料金をユメノに手渡す。金額を確認すると、ユメノは傍らの引き出しから一組のカードを取り出した。
裏面は青色、幾何学模様が記されているカード。河野が持っていたのと同じ種類のカードだ。
「では始めます」

ユメノは手慣れた手付きで、そのカードをテーブルに広げる。まるで黒いクロスの上にカードの花が一瞬で咲いたような錯覚を覚えるほどの手際だ。

カードにはタロットカードを思わせるような絵柄が記されている。
タッチは全て河野のカードと同じだが、全てのカードに違う図柄が描かれている。こうしてみると、このカードが何を意味しているか分かる。

「淫夢」と言っていた。
要はセックスや性癖を図柄にしているのだ。あの一枚では意味が分からなかったが、こうしておしなべて見ると、わかった。
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