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淫夢売ります
第11章 絡まる糸:意識する私
【絡まる糸】

随分狭い店内だわ・・・。

友人の薫に誘われて、占い屋に来たのだ。なんでも、夢占いというものができるらしい。学生時代からの友人である村瀬薫はそういうオカルティックな話が大好きだった。

「噂の占い屋に一緒に行かない?」
そう言われて、来たのが、この「夢占 モルフェ」だった。

店内はビロードの暗幕がそこかしこから下がっており、ただでさえ狭い空間をより狭く感じさせていた。まあ、客と占い師の距離を近くしたり、怪しげな雰囲気を醸し出す効果を狙っているのかもしれない。

そこの占い師は「ユメノ」と自己紹介をした。ユメノの前には椅子が一個しかない。
仕方なく、私は立っていることにする。

「狭い店内ですいません」
とユメノは盛んに恐縮していた。

占い師というと、まるでアラビアンナイトのシェヘラザードのような出で立ちを想像するが、ユメノの格好は至って普通だった。喋り方も。
ただ、その目だけは不思議な輝きを持っていた。いや、輝きと言うよりは、深みと言うべきだろうか。夜の闇を思わせるような、本当に真っ黒な瞳なのだ。

薫が夢占いをしたいと言うと、ユメノは、一瞬、迷うような目を私に向けてくる。
ああ、そうかと思い、「あっちで待っていたほうがいいですか?」というと、安心したように、ユメノは「そうしていただけると」と笑った。

私はそそくさと暗幕をくぐり、仕切られた入口近くのスペースに移動する。特に椅子などもないので、ここでも立っているしかない。

よく見ると暗幕には星や月を模した銀のオブジェが飾り付けてあり、それはそれで幻想的な雰囲気を演出している。それに、さっきまでは気が付かなかったが、薄っすらとお香のような良い香りもする。

10分ほど待っていると薫が暗幕をくぐって出てきた。
「面白かったよ。愛理もやったら」
愛理というのは、私の名だ、泉愛理。
暗幕の向こうではユメノが先程と同じようにニッコリと笑っている。
「お連れ様も、いかがですか?」
ちょっと考えて、せっかくなので受けることにした。今度は薫に暗幕の外で待っていてもらい、私がユメノの前の席に座る。
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