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淫夢売ります
第12章 絡まる糸:見透かされる私
☆☆☆
目が覚めた。
ベッドに寝かされていた。

「ここは・・・?」
見知らぬ天井、一体どこ?

「やっと目が覚めましたね・・・。」
ベッドの横にリラックスチェアがあり、桜井が座っている。文庫本を読んでいたようだ。どうやら桜井は眼が悪かったらしく、今はメガネを掛けている。

先程まではコンタクトだったのだろうか?

「泉さん、いっちゃうとすぐに気を失っちゃいますね。まさに気をやる、という言葉がぴったりですね。」
さて、と、と桜井は文庫を脇にある机に置くと、私に手を差し伸べる。その手を掴んで起き上がると、彼はまた椅子に腰を掛けた。

「泉さん、首についている、それ、なんだかわかりますか?」
言われて、首に手をやると、チョーカーのようなものが巻き付いている。一周触ってみたが、どこにも継ぎ目らしきものがなく、どうやって外すかがわからない。

「それ、今は便宜上『首輪』と呼んでおきましょう。その首輪、当社の新製品のセンサーが内蔵されています。役割は主に2つあります。
 ひとつは、つけている人のいる場所をこのスマホに伝えるGPS機能。まあ、迷子札みたいなものだと思って下さい。
 もうひとつは、こっちのほうが革新的なんですけど、つけている人の体の状態をモニターします。だから、泉さんが『気をやれ』ばすぐにこのスマホでわかるんですよ。
 これで、私は泉さんがどこにいても泉さんの絶頂を知ることができます。便利ですね。」
ひらひらと手に持ったスマホを示す。涼しい顔をしてなんということを言うのだろうか。本当に、ただ単に新製品を説明しているかのようだ。
「な・・・なにを・・・」

「あ、そうだ。まだ実験段階なのですが、実は、このセンサーが結構優秀で、犯罪捜査で使われる嘘発見器と同じくらいの精度があるんです。
 ちょっと試してみましょうか?」

「泉さんは、お蕎麦、好きですか?」
え?と思う。虚を突かれて思わず普通に答えてしまう。
「別に、どっちでも」

桜井は手元のスマホを見て、「うーん」とつぶやく。
「どうやら本当のようですね。
 じゃあ、コーヒーは好きですか?」

「いや、別に好きでは・・・」
ぴぴ・・と音がする。
「やや反応がありますね。本当は好きみたいです。」
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