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きのうの夜は
第9章 加仁湯
翌朝、目が覚めて窓の外を見てみると霧が出ていて薄暗かった。
私たちは7時の朝食を済ますと荷物を纏めて9時にチェックアウトした。

吉村が昨夜の事は何もなかったかのように話しかけてくる。

「荷物だけ加仁湯に置いてから日光沢温泉にお湯だけ浸かりにいかないか?」
「ええ、いいわ…」

八丁の湯から加仁湯までは歩いて7~8分の所にあった。
加仁湯とは関東最後の秘境にある温泉宿だ。

泉質の異なる5本の温泉を愉しめる「山小屋湯宿」なのだ。
温泉は滑らかな乳白色の硫黄泉で肌がツルツルになり美人の湯として有名だと言う。

3つの大きな露天風呂と男女別の内湯、樹齢600年のシナノキをくりぬいたハラハラ風呂、ロマンの湯や貸し切り露天蒼弓の湯など全部で13の浴槽があり、そのいずれからも鬼怒川の源流と対岸にそびえる層雲峡を望めるのだと言う。

日本一の高層湿原である鬼怒沼湿原へのアプローチの拠点としての利用客も多く、下山後の入浴はまた格別らしい。

そんな加仁湯にチェックインまでに時間があったので荷物だけを預けて加仁湯から7~8分くらいの所にある日光沢温泉に露天風呂を浸かりに行くことになった。

日光沢温泉は標高が1400mあり、鬼怒川湿原を経て尾瀬・大清水に至る登山口にもなっているため、客層は登山客が多いと聞く。

玄関横に下がる鐘は濃霧の日に、ハイカーに宿の位置を知らせるためのものらしい。
露天風呂は渓流沿いに2カ所ある。

乳白色の湯と透明の湯の両方が愉しめる。
また、天気により湯の色が変わる神泉は有名だ。

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