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きのうの夜は
第13章 エピローグ

私と高山は1年間の同棲を経て、フォトウェディングをして籍だけを入れて結婚した。
私は当時34歳、高山は31歳になったばかりだった。

私は、高山彩夏になった。
平井の名前はもう必要なかった。

そして、時は流れて1年の歳月が過ぎていた。
この頃、風の便りで吉村が結婚すると言う話を私は仕事先で聞いたのだ。

私のところにもWEB版の結婚回覧が回って来た。
そこには満面の笑みをした吉村とその横に寄り添うようにして立つひとりの女性がいた。

私は、その結婚回覧を読んでみる。
どうやら、吉村の結婚相手は“一人旅”が好きなようで、かなり自由奔放な性格らしい。

何だか、私に似た感じの女性だと思ってしまった。
結婚式はせずに籍だけ入れると書いてあった。

私は、これを読んで本当に心の底から吉村には幸せになって欲しいと思ったのだ。
吉村との温泉旅行の写真は全て吉村のマンションに置いて来てしまっていた。

多分、その写真は全部処分したに違いないと思った。
それで良いのだと思っていた。

私は、私で高山と仲良くやっている。
今日も高山がこう言ってくる。

「彩ちゃん、そろそろ生協に買い物に行こうよ…」
「そうね、アキラくん車出してくれる?」

「うん、いいよ…」

私たちは結婚した後、高山は私の事を“彩ちゃん”と呼んでいた。
私は、高山のことを“アキラくん”と呼んでいたのだ。

「アキラくん、今夜はなにが食べたい?」
「そーだなぁ、寒いからおでんがいいな…」

「じゃ、おでんにしましょう…」

そう言うとアキラはカートを押してゆく。
そのカートにおでんの具材を私は入れてゆく。

このアキラとも沢山の温泉旅行に行った。
それは、またの機会に書けたら書こうかと思う。

私は、今本当に幸せなのだった。


(おわり)


※続編は『あなただけ今晩は』になります。



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