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きのうの夜は
第2章 情事
そんな時は、いつも社内メールで吉村は誘ってきた。
「平井さん、今夜一緒に飲みにいかないか?」
「え?二人だけでですか?」
「あぁ、そうだよ。イヤかい?」
「いえ、そんなことありませんけど…」
「なら、1階のロビーで待ってて…」
そんなメールでのやり取りがあり、私たちは二人だけで飲みに行くことになった。
その当時、私は帰宅拒否をするようになっていた。
毎回、義母と顔を合わせれば「孫はまだか?孫はまだか?」と言われ続けていたのだ。
二世帯住宅に帰る気はしなかった。
この、今ある現実から遠ざけてくれる人なら誰でも良かったのだ。
だから、私は飲み会に誘われると必ずそれに参加していた。
二世帯住宅に戻り、義母と顔を合わせるのがイヤだったからだ。
この日も吉村から誘われたのでそれに応じた。
仕事が終わり、私は先に1階のロビーの椅子に腰かけて吉村が来るのを待っていた。
その時間は、長くも感じたし、短くも感じた。
暫くすると吉村がやって来たのだ。
「やぁ、平井さん、待たせたね…」
「いえ、大丈夫ですよ…」
「じゃ、行こうか」
「はい…」
そう言うと私たちは連れ立って会社を出た。
外に出ると、夕闇が迫っていた。