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きのうの夜は
第11章 トライアングル
高山がグイグイと押してくる。
その押しに私は幾分押されてしまう。
「そ、そうよね…」
「そうですよ…」
「もう、すっぱり別れ話した方が良くないですか?」
「え?」
高山がそう言ってくれたことに私は少しだけ気持ちがホッとするのを感じていた。
もうこれ以上吉村との間に距離感を取る必要はないと思っていたからだ。
「俺、吉村さんて、ちょっと苦手なんだよな…」
高山はそう言うとまたビールを飲んでいた。
吉村は確かにちょっと癖のある性格をしていた。
快く思わない部下も多かっただろう。
その一人が高山だったとは思ってもいなかったのだ。
「高山くん、私の返事はちょっと待ってくれない?」
「え?」
「時間が欲しいの…」
「いいですよ…俺、いつまでも平井さんのこと待ってますから…」
「ありがとうね…」
そう言うと私は冷酒をまた一口飲んだ。
店内は私たちの会話など無視するかのように騒がしかった。
私は、冷酒を飲みながら、もずくを口に運んで考えていた。
もう、吉村とはキッパリと別れた方がいいのではないか。
そう、思い始めていた。