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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
「そなたは、それほどまでに俺を嫌うか」
 低い、地獄の底から響いてくるような、地の底を這うような声。
 今の公子には、ただただ、この男のすべてが怖ろしかった。
 唐突に沈黙が訪れた。
 気詰まりな静寂はどんどん重たさを増し、公子はその重みに圧迫感を感じる。
 何を考えているのか、帝は感情の読み取れぬ双眸を公子に注いでいるだけだ。公子の身体の震えはますます烈しくなってゆく。
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