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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
「い、いやっ」
 公子は逃れようと夢中で抗う。軽々と抱き上げられ、御帳台まで運ばれてゆきながらも公子は必死で助けを求めた。
「誰か、来て! 助けてえ、助けて」
 涙が再び溢れ、夜気に溶けて散る。
 いつしか陽は完全に落ち、気紛れな夜がこの世を支配していた。夜の帳がこの静まり返った閨にもひそやかに降りている。
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