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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第5章 四の巻
 すぐ後ろから帝が喚きながら追いかけてくる。公子は恐怖と絶望に押し潰されそうになった。帝と公子では所詮、比べものにならない。直に追いつかれ、公子は捕らえられてしまうだろう。そうなれば、今度こそ、公子は有無を言わさず閨に連れ戻される。
 夢中で走っている中に、公子はよろめき、脚をすべらせた。自分の身体がゆっくりと傾いでゆくのを、公子はあたかも他人事のように感じながら、廊下から落ちていった―。
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